大規模グローバル企業のGPFS提出に関するATOのガイダンスについて – 日豪プレス

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税務&会計 REVIEW

EYジャパン・ビジネス・サービス
監査パートナー
石川達仁

プロフィル◎オーストラリア勅許会計士・公認会計士(日本、米国)。東京、ニューヨーク、ロンドンのEYでグローバル企業に対する会計監査及びアドバイザリー業務に通算20年以上の従事経験を有する。シドニーでは日系企業を中心に幅広い業種の会計監査に関与している。

大規模グローバル企業のGPFS提出に関するATOのガイダンスについて

オーストラリア国税庁(Australian Taxation Office、以下ATO)は2017年9月28日、15年12月制定の改正税法に関するガイダンスを発表しました。同改正は大規模グローバル企業(Significant Global Entities、以下SGE)に一般目的財務諸表(General Purpose Financial Statements、以下GPFS)の提出を義務付ける内容です。提出されたGPFSはオーストラリア証券投資委員会(Australian Securities Investments Commission、以下ASIC)の公開登録簿に掲載されます。

対象範囲

法人税の対象となる事業体(企業、法人パートナーシップまたは上場信託)のうち、SGEに相当する事業体(年間グローバル収益が10億豪ドル超のグループに属する連結対象子会社を含む)は、全て同法の範囲に含まれます。

当該事業体は、2016年7月1日以降に始まる会計年度(移行年度を除く)からオーストラリアの法人申告書を提出すると同時に、ATOにGPFSを提出する必要があります(図1参照)。

義務

会社法上の事業体

図1に示した通り、現在GPFSを作成してASICに提出している会社法上の事業体は影響を受けません。ただし、その他の会社法上の事業体のうち、会社法に基づいて財務諸表の提出を免除されている(ただし作成は免除されない)事業体(特例大規模事業体、「特例事業体」)、または現在ASICに特定目的財務諸表(Special Purpose Financial Statements、以下SPFS)を提出している事業体は、今後オーストラリア会計基準(Australian Accounting Standards、以下AAS)に基づいて作成したGPFSをATOに提出することが義務付けられます。この財務諸表は、オーストラリアまたは外国最終親会社(ultimate parent)の連結財務諸表に基づいて作成することができます。

こうした会社法上の事業体は、現在会社法に基づいてSPSFを提出している場合、ATOにGPFSを提出することになってもそれを変更する必要はなく、ATOに別途GPFSを提出することで対応可能です。ただし実際には、いずれの要件も満たす場合、事業体は1つの財務諸表、すなわちGPSFを作成することになるでしょう。

他の事業体

会社法の適用を受けないオーストラリア居住法人(有限パートナーシップなど)または会社法第2M.3条適用対象外の事業体(特定の小規模会社)及び恒久的施設(Permanent Establishment、以下PE)を運営する外国居住法人は、AASまたは商業的に公正と認められた会計原則(Commercially Accepted Accounting Principles、以下CAAP)のいずれかに従って作成されたGPFSを提出することができます。ATOのガイダンスには、AASに従って作成されたものであれば、外国最終親会社の連結財務諸表の提出が認められる旨が記されています。私たちの考えでは、外国企業がこのオプションを選択する可能性は低いため、次の対応策は以下のいずれかになります。

  • ●オーストラリア国内グループの財務諸表をAASに従って作成し提出する。
  • ●外国親会社の財務諸表が受け入れられるかどうかを検討する(後述する「商業的に公正と認められた会計原則(CAAP)」を参照)。

商業的に公正と認められた会計原則(CAAP)

この新しい概念は、会社法の下で財務諸表を作成する必要がない事業体に適用されます。また、会社法上の事業体(SPFSを作成する会社など)にも初年度のみ特例として適用されます(後述する「初年度の特例」を参照)。

CAAPには、AAS、IASBによるIFRS、US、GAAPなどが含まれますが、これらに限定されません。ガイダンスは他のGAAP(日本基準など)については言及していないため、今後の動向を引き続き注視していく必要があります。

初年度の特例措置

提出期限の延長

ATOは、ガイダンスの発行が遅れた(課税年度が6月30日で終了する事業体にとっての適用初年度の終了後)ことから、GPFSの提出期限を延長する措置を設けています。この措置は、初年度のみ、かつ17年6月30日に終了する課税年度のみに適用されます。該当する事業体はGPFSの提出期限が18年3月31日までとなりますが、税務申告書提出のタイミングは変更されていません。

会社法上の事業体――外国支配企業

更に、会社法の適用対象となる外国支配企業のうち、現在SPFSを提出している企業は、16年7月1日から17年6月30日の間に始まる最初の課税年度に対して特例措置を受けることができます。該当する事業体はGPFSを提出する必要がありますが、準拠する会計基準はAASでも他のCAAPでも構いません。従って、現在SPFSを提出している外国支配企業は、新しいATO報告制度に基づき、初年度のみ外国親会社の財務諸表(CAAP、GPFSであれば)を提出することができます。ATOは、提出されたGPFSが外国親会社の属する国のCAAPに準拠して作成されている場合、AASに従って作成されているかどうかを初年度に確認する予定はないとしています。

その他検討事項

開示項目を簡素化した財務諸表

ATOの当初草案にはTier1オーストラリア会計基準(以下Tier1)に準拠したGPFSの提出を義務付けるという文言がありましたが、EYはATOに対し、AASBにおいてTier2オーストラリア会計基準「開示項目を簡素化した財務諸表」(以下Tier2)もGPFSの一形式として選択可能であるという点を提言しました。
 最終ガイダンスでは、ATOはオーストラリアにおける税の透明性に資するのに最適なのはどちらの選択肢(Tier1またはTier2)かを各事業体が検討すべきであると記しています。

監査

GPFSの監査は法律で義務付けられていませんが、GPFSがAASまたはCAAPに従って作成されていることを示す「信頼に足る証拠」として、ATOはGPFSを監査対象とすることを推奨しています。

Multiple Entry Consolidated(MEC)グループ

一般に、Multiple Entry Consolidated(以下MEC)グループの子会社(通年加入している場合)は、GPFSを個別に提出することが義務付けられていません。
 ガイダンスの「ベスト・プラクティス」の項には、Head CompanyのGPFSは「オーストラリアの事業に関する情報は非常に限定的である」と記されています。その上で、「ベスト・プラクティス」のコメントには、AASに従って「真実かつ公正な」見解を提供しない可能性があるにもかかわらず、MECグループの合算財務諸表の作成が認められる場合があると記されています(図2参照)。

ペナルティー

ATOのガイダンスには、SGEが期限までにGPFSをATOに提出しないと行政処分が課されることが明記されています。17年7月1日以降、SGEに対する行政処分のペナルティーが大幅に増加しました。SGEが提出を怠った場合に課されるペナルティーは、10万5,000豪ドル(28日以下の遅延)から52万5,000豪ドル(112日を上回る遅延)の範囲です。

今後の動向

ATOは17年10月27日を期限としてコメントを募集していました。これらを基に何らかの形で更なるガイダンスが公表される見込みですが、その時期は本校執筆時点(11月末)では未定です。

日本基準がCAAPとして認められるかも含め、本件については今後の動向を注視する必要があります。


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