厳しい現実の直視を 改革で自立の道を探れ【農水省経営局協同組織課長 日向 彰氏 】 – 農業協同組合新聞

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2017.11.13 
厳しい現実の直視を 改革で自立の道を探れ【農水省経営局協同組織課長 日向 彰氏 】一覧へ

・総合JAビジョン確立のための危機突破・課題別セミナー
・10年先見据え「選ばれるJA」に

 第12回の課題別セミナーでは公認会計士監査への対応をテーマに報告と意見交換しました。監査の問題を含め、政府が「農協改革」で農協に求めているはイコールフッティング、つまり一般の会社と同じ扱いにするということです。セミナーで講演した農水省経営局協同組織課の日向彰課長は「これから進む少子高齢化、厳しくなる金融環境のもとで、「いま改革に取り組まないと、10年、15年先はない」と指摘しています。その要旨と、意見のやりとりを掲載します。

 いま国が進めている農業の競争力強化を分かりやすく言うと、農業者や農協が作っている農産物を、作るだけでなく、どうやって売れるようにするかということです。これから関税が下がります。そうした流れのなかにあるという現実を受け止め、日本農業をどうするか、みんなで考えようということです。
 生産資材の仕事に関わり、肥料や農薬、農業機械が高いということで、韓国の生産、値段、業界の構造、国の規制などを調べました。たしかに日本では企業が乱立しているため稼働率が悪い。国内の肥料、飼料工場を見て回ったが、みな同じ悩みでした。農業者の多様なニーズに応えようとすると工場の稼働率が落ちます。特に中小の企業からは、もっと種類をまとめられないかという声が聞かれました。そこで国はなんとか支援できないかなというのが農業競争力強化プログラムです。
全農も汗を掻いて
農水省経営局協同組織課長 日向 彰氏 1年間、全農改革を担当しました。全農は飼料の3割、肥料で6割のシェアがあります。そこで銘柄を集約するとか、購買の競争入札実施などの年次計画をつくってきました。1円でも安く農業者に供給し、農業者が作ったものを1円でも高く売れるよう、米の場合は直接販売や輸出の拡大などで、全農も汗を掻いて欲しいということです。農協の原点は、農業者による農業者のための組織です。農業者の所得向上によって、農協の地盤が強化されるとの立場で資材問題に取り組みました。
 農協改革では、みなさんから厳しい意見をいただいていますが、農協は農業振興のプレイヤーであり、現場の協力が得られないと改革は進みません。それも強制でなく、改革はあくまで、自主的取り組んでいいただきたい。
 そのとき考えて欲しいのは、10年後の少子高齢化、金融事情、農業の厳しい状況を認識し、持続可能な農業のモデルをつくることです。これを担い手農業者と力をあわせてやってほしい。自分の近くの田んぼや畑は10年後、だれが担うのか。農協は今から、その人との関係を築かないと10年後やっていられなくなるのではないでしょうか。農協はその地域のことに精通しています。その力が10年、15年後地域の、日本の農業を支えることになります。つまり10年、15年後、農業者や担い手から選ばれる農協にということです。
 国はこれまで農協と一緒にやってきました。しかし、農協改革は、農協を特別扱いするのでなく、イコールフッティングにするということです。いま、そういう時代状況にあります。それには自分の農協を利用することが「当たり前」というのではなく、「選ばれる」存在でなければなりません。
 担い手の農協離れが言われますが、逆に言うと、根っ子は農協の担い手離れかも知れません。農協が担い手のニーズに応えないためメリットを感じず、メリットのある方へ流れているのではないでしょうか。ホームセンターの肥料が安いのは、店頭に置いているだけで、農協は配達などのアフターサービスまで含めた価格です。そこを含めて農業者の理解が得られる努力をして、競争に勝ってほしい。
大きい認識の格差
 農水省では28、29年度、農協の自己改革についてアンケート調査しました。改革への自己評価、認定農業者の評価を中心に、販売・購買事業の改革、役員の選び方などで徹底した話し合いやっているかどうかを聞いていますが、農協と農業者の評価、認識に落差がありました。特に販売事業など50%くらいの落差です。その差を縮めないといけないのではないでしょうか。努力されているとは思うが、農家のみなさんが評価していないのは厳然たる事実。やったことが伝わるように、綿密にキャッチボールしてほしい。
 農水省では、指導機関ヒヤリングやっていますが、47都道府県の農政・農協担当者、県中央会、農林中金の支店の担当者を呼び、普段どのように農協と接しているか、傘下農協の経営、自己改革はどうかなどです。
 その中で部門別損益を示してもらったが、多くの農協が、信用・共済で稼いで、生活購買に使っています。経済事業では九州、北海道で6割ぐらいの農協が黒字ですが、全国で黒字は2割ぐらい。多くの農協で赤字を信用共済の収益で補填するという状況が続いています。それが間違っているというより、その現実を直視しないといけない。今後の見込みは、きびしくなるばかりです。
 農協以外の金融機関も農業融資に乗り出しています。IT技術が進みフィンテックが普及すると直営の信用事業が成り立つかという問題もあります。共済事業も全共連は積立型の長期契約の比重が高く、金融環境の悪化が直接影響します。そして地震保険のリスクです。保有契約高の約半分を持っていますが、損保は政府の再保険があり、地震の規模によって政府の負担が決まっています。被害規模が大きくなるとほとんど国が再保険で保障します。
 しかしJA共済は政府の再保険がありません。全共連には共栄火災があるのだから、活用を考えるべきではないでしょうか。大地震が予想される中で悠長に構えず、組合員と膝づめで議論し、事業モデルをつくるべきです。さらに、損保会社の多くは、その利益の半分くらいは海外で得ています。人口減少や若者の車離れなど、これから小さくなる国内市場だけでやっていけるのか。現実をみなければいけません。
 一方、経済事業の赤字をどうするか。農業者に感謝されるためには、しっかり売って販売を拡大することです。農協の職員は積極的に農家を回って、1円でも高くという農業者の切実な思いを聞き、実現するところに活躍の場があります。店舗、事業ごとの収支を示し、農業者とキャッチボールして一緒に考える。それを愚直にやるのが農協離れを防ぐ道ではないか。と思います。
〝住専問題〟忘れず
 いまの政府の農協改革の根底には90年代の住専問題があります。そこで農協の経営の健全化が出てきたもので、幸い、今は問題ありませんが、いつまたおかしくなるか分かりません。住専問題を忘れないようにしてもらいたい。
 また最近、農協の不祥事が多く、独禁法違反も後を断ちません。いろいろ事情があるのは仕方ないことですが、それで信頼を失うことにならないよう、厳しく対処しています。農協なのだから、みんなが使って当たり前という気持ちがあるとすれば、それは遅れた意識だと思います。「当たり前」でなく、「選ばれる」農協改革を進めていただきたい。
 公認会計監査の導入では、監査報酬がどうなるのかに関心があると思いますが、農水省で監査法人に頼み、28JAで調べました。その結果、当初コストが上がるが、対策をきちんとやると3年以内に落ち着くという結果でした。コストを下げるためには内部統制をしっかりしなければ、ということです。来年度から2年間で、具体的な対策のマニュアルをつくる方針です。
 農協と一般の会社の違いですが、会社は提供する商品・サービスの対象であるお客さんは出資者とは別人です。しかし農協のお客さんは出資者である組合員です。従って、もっと自分の組合員のニーズを把握できるはずです。利用によってメリットを受けられるという優れた組織であることを認識すべきです。

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