東大発ベンチャー現役CFOが教えるデットファイナンス入門 – マイナビニュース

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前回は融資を受ける資金の使途について説明いたしました。今回は、赤字の状況下で融資を受けるための条件について、解説します。

業績が赤字の場合、資金が減ることを意味します。融資をどのように返済していくのか、利益をどう出していくのか、計画に妥当性はあるのか、将来の見込みについて詳細に検討する必要があります。

私が考える、赤字の状況下で融資を受けるための条件は4つです。(1) 売上高が伸びていること、(2) 赤字の幅が縮小していること、(3) 月次で残高試算表を作成できること、(4) 税金を滞納していないことです。事業が拡大していけば、黒字に転換して利益をもとに返済を続けられることを示し、金融機関に今リスクを負担していただく代わりに、将来取引金額を増やすことで報いていきます。

上記の4項目について、整理します。

(1) 売上高が伸びていること

実績値として売上高が伸びていることを示すのはもちろんのこと、将来も成長が続くことを説明します。既存顧客のリピート率や購買頻度、顧客単価、見込顧客からの新規お問い合わせから成約に至るまでのコンバージョン率、プッシュ型営業の効率等を考慮し、営業計画が破綻していないか確認することが必要です。

例えば、目標の売上金額を達成するために要求される顧客との面談回数があったとして、在籍している営業職員の人数と比較して物理的に無理がないか、検証が必要でしょう。達成不可能な数字であれば、計画の見直しが必須となります。

(2) 赤字の幅が縮小していること

現在は赤字でも将来的に黒字に転換するためには、最低限、売上総利益が正の値でないと厳しいでしょう。商品・サービスを生産すれば生産するほど赤字が拡大するようでは、資金の返済がおぼつかないからです。商売を続けて売上高を伸ばしさえすれば利益が出るタイミングが来ると予想できるように、実績としても赤字の幅が縮小したことを示します。

製造原価を低減させるための取組を具体的に(精神論ではなく科学的に)計画して進めるとともに、販売活動や管理業務を効率化していく活動が必要となります。黒字となる時期がいつか予測し、説明できるようにしましょう。

赤字の状況下で、どこまで頑張り続けてよいのか、判断に迷うことがあると思います。ひとつの考え方として、ミクロ経済学の用語で「操業停止点」という概念があり、判断材料として活用できます。損益分岐点を下回っていても、固定費用を回収できるうちは事業を続けてもよい可能性があります。事業成長の余地がない場合は、操業停止点を上回っていても、傷口が大きくなる前に撤退すべきでしょう。

(3) 月次で残高試算表を作成できること

業績に異変があればすぐに検知し、金融機関へ相談できることが望ましいです。公認会計士や税理士へ経理を業務委託する形態でも、社内に経理体制を整える形態(自計化ということがあります)でも構いません。半期に1回、年に1回の業績の振り返りでは、事業環境の変化に気づかずに、問題が起きた場合の対処が遅れます。機敏に経営判断するためのチェック体制が求められます。

言い換えれば、月次で締める経理体制を維持するための経費を捻出できない場合は、融資を受けることは極めて難しいでしょう。経理体制に割く予算がない場合は、最悪事業撤退の決断を迫られるかもしれません。値決めを改めたり、原価を低減するなど、利益が出る構造改革が必要です。

(4) 税金を滞納していないこと

連載の第6回(融資の申込時に提出する書類)で述べた内容ですが、借り手が担保処分で資金を返済する際、まず租税債権が優先されます。租税債権がないことで、金融機関はリスクを取る判断をしやすくなります。

最後に、赤字の状況下で融資を申し込む際、比較的審査を通りやすいと考えられるのは連載第4回(融資の商品による違い)で解説した制度融資です。例として、東京都文京区の平成29年度の制度融資を紹介します。

「緊急事業資金」と呼ばれる融資があり、不況業種等向けとして「中小企業信用保険法第2条第5項第1号から第8号までのいずれかの規定により認定された特定中小企業者」が対象です。その中の「5号:業況の悪化している業種(全国的)」に該当すれば、利用できる可能性があります。

赤字の状況下で融資を受けるための条件についての説明は以上です。次回は予算の立て方について解説します。

※写真と本文は関係ありません



執筆者プロフィール:千保 理(せんぼ ただし)

株式会社情報基盤開発 CFO(最高財務責任者)

ロンドン日本人学校中学部、東京学芸大学教育学部附属高等学校、東京大学運動会バドミントン部を経て、東京大学大学院経済学研究科修士課程企業・市場専攻修了。専門は企業金融(コーポレート・ファイナンス)。生命保険会社のシステム子会社にて勤務した後、東京大学発IT系ベンチャー企業である株式会社情報基盤開発にCFOとして参画。Microsoft Innovation Award 2015にて勤務先が優秀賞を受賞した際のプレゼンター。融資による資金調達を得意としている。



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