漂流するニッポンの「土地神話」 – iRONNA(いろんな)

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 少子高齢化が進めば、後継ぎがいなくなる。職場における若い人材の不足などが懸念されるが、目を住宅や土地に転じれば大都市部でも空き家や空き地が広がりつつある。野村総合研究所の予測によれば2033年には空き家率は30・4%に上昇する。全国の約3戸に1戸が空き家になる計算だ。

(iStock)

 空き家問題で困るのは、相続人がなく持ち主が不明となることである。相続人がいても、手続きを敬遠する例も増えている。もともと家が建っていなかったところも含め、所有者不明の土地が広がっている。法務省が全国10カ所(調査対象約10万筆)の相続登記未了の可能性がある土地を調査したところ、最後の登記から50年以上経過している土地が中小都市や中山間地域で26・6%、大都市でも6・6%あった。

 一方、民間有識者でつくる「所有者不明土地問題研究会」が相続登記されなかったり、所有者の住所が変わって連絡がとれなくなったりした土地を推計したところ、全国で約410万ヘクタールに及ぶという。これは九州を上回る面積である。所有者不明土地はさらに増えると見込まれている。日本社会が「大死亡時代」を迎えるためだ。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、団塊世代が90代となる2040年頃に死亡数が167万9千人でピークを迎え、その後も160万人水準で推移する。現在よりも37万人ほど多い計算だ。団塊世代は高度成長期に地方から大都市部に出てきた人が多い。相続人となるその子供たちの中には、親の出身地に残された相続対象の土地を一度も訪れたことがないという人もいる。親が土地を所有していたことすら知らないというケースもある。

 放置される時間が長くなるほど相続人や関係者が増えるため、問題の解決をより難しくする。所有者不明土地となるのは相続人の間で調整がつかないことも理由だが、ここまで広がったのは人口減少によるところが大きい。人口が減れば人が住まない地域が広がり、家や土地に対する人々の価値観を劇的に変える。登記手続きの煩雑さや管理にかかる負担が、資産価値に釣り合わなくなってきているのだ。

 所有者不明土地の弊害は小さくない。固定資産税などの徴収ができないだけでなく、公共事業や民間の再開発事業の妨げになる。農地の集積や森林の適正管理にも支障をきたす。そればかりか、ゴミの不法投棄や雑草問題を引き起こせば、周辺の住環境が悪化することにもなる。九州を上回る面積になっているのは、国土の発展を揺るがす大問題であろう。「大死亡時代」を迎える前に、国家として対策を講じなければならない。



 そうでなくとも、人口減少に対応するため、これからの日本ではコンパクトな町作りが不可欠となる。政府は幅広い公共目的のために利用できるよう法整備を図る方針だが、人口激減時代とは「公共優先」という考え方がより強く求められる時代に違いない。われわれは国土について根本から考え直す時期を迎えている。(河合雅司「一筆多論」 産経ニュース 2017.08.19



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