預貯金、下ろせない? 名義人死亡で口座凍結 手続き厳密化の流れ – 東京新聞

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銀行から渡された相続手続きの書類を手にする女性=名古屋市内で

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 「亡くなった夫の口座からお金を引き出すのに苦労している」と名古屋市の女性(75)から本紙に相談が寄せられた。名義人が亡くなると、トラブルになりやすいのが口座の預貯金の扱い。「そのとき」になって慌てないよう、死亡後の預貯金がどうなるか知っておきたい。 (寺西雅広)

 女性の夫が亡くなったのは三月下旬。夫名義の銀行口座には約百十万円が残っており、約百万円の葬儀費に充てようと銀行の窓口に出向いたが、「葬儀費の請求書と親族の印鑑が必要」と断られた。

 後日、葬儀社からの請求書と夫の妹の印鑑登録証明書を持っていき、手続きをすると葬儀費は受け取れた。だが、残りの約十万円は「葬儀費ではないので、相続人全員の同意がないと下ろせない」。女性と亡くなった夫には子どもはおらず、法定相続人は夫の妹、代襲相続人であるおいとめいを合わせて計六人。「印鑑は集められると思うが、こんなに手続きが必要だとは思わなかった」と話す。

 「名義人が亡くなったら、その時点で口座の預貯金は相続財産になる。口座は凍結され、基本的に一円も下ろせません」。相続に詳しい名古屋市の司法書士、水谷英二さんはそう話す。

 金融機関が口座を凍結するのは、遺産分割が確定する前に一部の相続人が勝手に引き出し、他の相続人ともめるなどのトラブルを避けるため。凍結するのは金融機関が死亡を知った時点で、多くは遺族が金融機関に連絡したときになる。

 凍結期間は全相続人による遺産分割が確定し、相続手続きが終わるまで。手続きのために用意する書類は遺言書や遺産分割協議書があるかどうかによって異なるが、多くは被相続人の戸籍謄本など「死亡の事実」と「法定相続人」が確認できる書類や相続人の印鑑登録証明書、銀行所定の書類などが必要となる。手続き完了には二週間から一カ月かかり、それまで銀行は個別の引き出しに応じないのが原則だ。

 一方、今回のように葬儀費など急を要する支出に対しては、手続きが終わる前でも金融機関が便宜的に応じるケースもある。この銀行の広報は「やむを得ない事情があり、緊急な場合、葬儀費に限って一定の金額内で払い戻しに応じることはある。その際の必要書類は個々のケースによる」と話す。

 ただ、全国銀行協会は「葬儀費や医療費分を払い戻すかどうかは、実際に何に使われるか、訴訟リスクがないか、などを確認したうえでの各銀行の判断による。統一ルールがあるわけではない」と説明する。

 また、昨年十二月には最高裁が被相続人の預貯金について「遺産分割の対象」と判断。これまでの判例では「対象外」とされ、それが金融機関がある程度、遺産分割前でも葬儀費などの請求に対応する根拠の一つでもあったが、同協会は「最高裁の判断通り、厳密に相続人全員の合意が必要となると、銀行の便宜的な払い戻しは難しくなるといわれている」と話す。

 水谷さんによると、「葬儀費などを被相続人の預貯金で対応したいという相談は多い」という。対策は事前に必要な資金を引き出しておいたり、遺言であらかじめ葬儀費などを受け取れるようにしておくなどに限られ、「早めに準備しておくことが大事」と強調する。

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