[アグリフロンティア 5・下] シャッター通りに変革 田舎だから・・・概念壊す 課題解決 知恵募る – 日本農業新聞

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 なぜ島根県江津市に、若者の起業が増えたのか。2010年から行う農村の課題を解決するビジネスのアイデアを募るコンテスト。これが若者の心に火を付けた。住民や若者で組織化したNPO法人「てごねっと石見」が仕掛ける。

 波及効果が広がる。市の商工団体によると、2016年までの5年間の新規創業数は約130。11年以前に比べて倍以上のペースで、ビジネスが生まれている。

 てごねっと石見代表で兼業農家の横田学さん(67)がうれしそうに話す。「こんな田舎で事業が成功するはずがない。それが住民の思い込みだったことは、次々とビジネスを成功させる若者たちが証明した」

 

空き店舗を再生

 若き経営者の先頭を走る「デザインオフィスすきもの」の社長、平下茂親さん(36)。創業5年で2億円を売り上げた。12人を正社員として雇用。朽ち果てそうな農作業小屋や古い家、商店街の空き店舗。おしゃれによみがえらせるセンスが話題を呼び、注文が殺到。50以上の建物をよみがえらせた。

 平下さんは、東京やニューヨークに住んだ経験がある。どこに住んでも、古里への思いは消えなかった。12年に帰郷。改装に使う木材は地元産にこだわる。「農村はナリワイが結び付き、地域内で経済を回せる」。デザイン力で古い建物に新たな命を吹き込み、街の風景を変えた。

 平下さんが改築した店舗で、4月にカフェを開いた同市出身の徳田恵子さん(28)と佐々木香織さん(28)。コンセプトは田畑を感じるカフェ。地産地消の食材にこだわり、多世代の住民が集う場所を目指す。夢をたずねると2人の声がそろった。「経営を成功させ、応援してくれた家族や仲間に恩返ししたい」

 インターネット交流サイト(SNS)をフル活用して店の情報を発信する。目標だった月70万円の売り上げは、起業1カ月で達成した。

 

濃い関わり幸せ

 東京の大手企業を退職した神奈川県川崎市出身の原田真宜さん(28)。16年夏。先に移住していた先輩に誘われ、移り住んだ。「自分の手でワクワクする農業をしたい」。選んだ作物はブームのパクチー。耕作放棄地を耕し、仲間と農業生産法人の経営を始めた。

 水耕栽培施設は手作り。水路工事も自力で行い、初期投資は通常の2割以下に抑えた。一方、想像以上の草刈りの大変さ、予期せぬ病害虫の発生に直面。農業の奥深さと厳しさを思い知らされた。それでも「おいしいと言われることがこんなにも幸せとは知らなかった」。達成感は強い。

 交通が不便で買い物が好きにできない住民に、温かいランチを届けたい――。この思いからキッチンカーを始めた枡智裕さん(31)。出身地の神奈川県で勤めていた飲食店を退職し、妻の故郷に移住した。「自然、人、土地との濃い関わり。これが経営に生きている」

 江津市出身で市のタウンマネジャーを務める盆子原照晶さん(32)は、東京からUターンして驚いた。高校時代までの古里の印象は「閉鎖的、閑散、暗い」。今、同世代の手で活気づいた古里が好きだ。「元気のない江津のイメージは消えた」。チャレンジ精神と固定概念にとらわれない若者。新しい発想を応援し、育む覚悟を決めた農村。地域の力と若者の力によるビジネスが、町の姿を変えつつある。

 地域の課題を事業に変える「ソーシャルビジネス」。人口減少、高齢化、商店街の閉店、耕作放棄地の増加・・・。影の部分として、否定的に捉えられてきたことが、もうけの種になる。そんな新たな時代の最前線を江津市で見ることができる。

<メモ> 厚労省雇用保険課によると、事業所開業数は2016年度全国で11万9780。東京商工リサーチによると、16年の全国の社長の平均年齢は61.19歳で、高齢化が進む。全国の商店街の空き店舗化も深刻な問題だ。島根県江津市は20、30歳代を中心とした起業が目立つだけでなく、駅前の商店街の空き店舗が年々解消され、ほぼ埋まっている。





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