東芝メモリ分社化で従業員の雇用は守られるのか – 榊 裕葵 (社会保険労務士) – BLOGOS

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原子力発電事業による損失拡大で東芝は危機的状況に陥り、綱渡りの経営が続いている。

■メモリ事業の分社化と従業員保護の観点

直近の大きな動きとしては、事業売却による株主資本増強に向けての布石として平成29年3月30日に開催された臨時株主総会で、メモリ事業の分社化が決定され、これにより、メモリ事業は4月1日より「東芝メモリ」として独立した1つの会社として再出発することとなった。

東芝のメモリ事業は四日市工場で集中的に行われており、2016年12月時点では、四日市工場に属する従業員は6,200名ということである。(2016年12月6日付 東芝IR資料「四日市工場のご案内」より)

この6,200名の雇用は守られるのであろうか。

会社法における会社分割制度では、会社をどのような内容で分割するかについては原則として分割計画書等で自由に決められる。しかし、分割の対象となる事業に従事していた従業員が承継の対象から排除されたりしてしまうことは、従業員保護の観点から適切ではない。

■労働契約承継法の定め

この点、会社分割が行われる場合には「労働契約承継法」という法律が適用されることを覚えておきたい。

労働契約承継法においては、分割される事業に従事していた従業員は、分割先に転籍することを前提としており、分割される事業に従事していたにもかかわらず承継の対象とされなかった従業員には異議を申し立てる機会が与えられ、異議を申し立てた場合には分割先に転籍することができるという法制度になっている。

今回の東芝のメモリ事業部に関して具体的に当てはめれば、メモリ事業に従事していた従業員のうち、分割計画で「東芝メモリに転籍する対象者リスト」に入っている人は当然に東芝メモリへ転籍となる。

逆に、メモリ事業に従事していたにも関わらず、「東芝メモリに転籍する対象者リスト」に入っていない人は、「東芝メモリで心機一転頑張りたい」と望めば東芝メモリに転籍することができるし、「東芝本体に残りたい」と望めば東芝本体の従業員として既存の雇用契約を維持することなる。

なお、メモリ事業に従事していなかった従業員に関しては、「東芝メモリに転籍する対象者リスト」に含まれていれは、転籍する・しないは本人の意思で決められるが、リストに含まれていなければ、本人が希望しても東芝メモリに転籍することはできない。

■東芝メモリに転籍するメリット・デメリット

今回の分割計画で「東芝メモリに転籍する対象者リスト」自体がどのような基準で作成されたかは不明なのでここでは触れないことにして、本稿では東芝メモリに転籍した場合、転籍しなかった場合のメリット、デメリットについて考察してみたい。

まず、東芝メモリに転籍した場合である。

メリットは、差し当たっての雇用の安定である。全社的に経営危機に陥っている東芝グループの中で、優良事業を切り出して分社化したのであるから、東芝メモリは当然安定収益を生み出せる優良会社ということになる。優良会社であれば法的に整理解雇は許されないので、当面は解雇におびえる必要がなくなる。また、東芝での労働条件を東芝メモリがそのまま承継するので、労働条件が不利益に変更されることもない。

デメリットとしては、「誰が東芝メモリの支配株主になるか」というリスクである。東芝は、東芝メモリの株式を外部に売却することによって資金を得ようとしているのであるが、売却先としては、日本政策投資銀行など国内勢も関心を示しているが、米国のウエスタンデジタル、台湾の鴻海精密工業、韓国のSKハイニックスなど海外の同業他社に買収される可能性もある。米系の投資ファンドなども関心を示しているという情報もある。

すなわち、誰が支配株主になるかによって、雇用環境が激変する可能性があるということだ。もちろん日本国内で事業を行うからには誰が支配株主になっても日本の労働法は守られる必要があるが、成果主義的な賃金体系になるとか、上司や同僚が外国人になって英語ができなければ社内の主要ポストに就けなくなるとか、どのような変化が起こるかは予測が難しい。





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