年金額下がりやすく 賃金・物価上昇でも据え置きも 4月から0.1%、3年ぶり引き下げ – 日本経済新聞

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 4月から1年間の年金額がそれまでに比べ0.1%とわずかながら引き下げられることが決まった。引き下げは3年ぶりだ。公的年金の額は世の中の物価や賃金の変動に応じて毎年改定する仕組みになっている。これらが下がったことが年金額に反映された。ただ今後、物価や賃金が上がっても年金額はそう簡単に増えないとの声も聞こえる。どういうことなのだろうか。

 まず年金額の改定について基本を押さえておこう。

 年金は2カ月分をまとめて支給するのが原則。4、5月分は6月15日に指定の口座に振り込まれる。改定後の年金を受け取るのはそのときからだ。4月にも年金の振込日があるが、それは2、3月分なので金額はまだ変わっていない。

 日本年金機構は年金受給者に対し、5月から順次新しい年金額の通知書を発送する。自分の年金額がどうなるかをしっかり確認しよう。ただ、通知を見る際に特に注意が必要な人もいる。それは「現役時代に勤めていた会社に厚生年金基金という企業年金制度があった人」(同機構)だ。

 そうした人は、厚生年金の一部が基金から支払われる。その分は通知には記載されないため、通知額は少なく見える。そのうえ、0.1%の減額分を基金支給分からは差し引かず、日本年金機構が支給する分からすべて差し引く。このため通知だけ見ると減額幅は0.1%より大きくなる。

 では、支給される年金額はどの程度なのだろうか。

 自営業者などが加入する国民(基礎)年金は原則として、保険料を払った加入期間で金額が決まる。40年加入で満額を受け取る場合、その額は4月から月6万4941円。これが前年度比で0.1%減った額だ。

■天引き額を確認

 厚生年金は会社員時代の給料と加入期間で金額が決まる。一概に金額を示しにくいこともあり、厚生労働省は年金額を「モデル世帯」で例示することが多い。夫は平均賃金で40年間働き、妻は専業主婦などと想定したモデル世帯の年金額は4月から0.1%減り、月22万1277円となる。

 モデル世帯といわれてもぴんとこない人も多いだろう。年金制度に詳しい特定社会保険労務士の東海林正昭氏によると、大卒で37~38年ほど会社に勤めた男性の場合、65歳から受け取る年金額は厚生年金と基礎年金を合わせて月16万~17万円程度の人が目立つ。

 年下の妻がいる場合は妻が65歳になるまでの間、家族手当ともいうべき「加給年金」が支給される場合がある。これを加えることで「なんとか月20万円台に届くことも珍しくない」(東海林氏)ようだ。妻が65歳になれば加給年金はなくなるが、妻の分の基礎年金も受け取れるようになるので、世帯としての年金額は増えるのが一般的だ。

 年金が口座に振り込まれる際には、介護保険料や税金などが天引きされることがある。日本年金機構から送られてくる通知書には、そうした天引き額も表示されているので確認しよう。

 最後に、これからの年金額がどうなっていくかについて見ておこう。

 公的年金の給付水準は世の中全体の豊かさに左右される。具体的には現役世代の賃金が増えているときは、原則65歳で受け取り始める際に決まる年金額も増え、賃金が減っていれば年金額も減る。そして、いったん決まった年金額はその実質価値を維持していくために物価が上がれば増やし、下がれば減らすというのが基本ルールだ。

 ところが少子高齢化が進み、基本ルール通りではやっていけなくなってきた。

 政府は2004年、このままでは現役世代の年金保険料負担が重くなりすぎると考え、大規模な制度改革を実施した。まず保険料に上限を設定。今年9月以降、保険料率は上限に固定されることになっている。

 そして、限られた財源の範囲内で年金を支給するため、賃金や物価が伸びても、そこから一定の「調整率」を差し引いた分しか年金額を増やさない仕組みを導入した。これを「マクロ経済スライド」と呼ぶ。

■改革法で厳しく

 調整率は、労働力人口の減少率などを基に毎年計算され、1%前後と見込まれている。これにより、従来ならば賃金や物価の上昇で1%年金を増やせるはずだったときでも、調整率が1%ならば差し引きゼロで年金額は据え置きとなる。

 当面、賃金や物価が大きく伸びることは考えにくい。そこにこの仕組みが発動されれば、年金額はさらに増えにくくなる。ただ、マクロ経済スライドは賃金や物価が下がるデフレ経済下では実施しないと決めていたため、これまでに1度しか発動されていない。

 そこで、昨年末の臨時国会で年金改革法が成立。デフレ下で実施できなかった分は持ち越して、物価や賃金が十分に上がった年に、まとめて年金額を引き下げられるようにした。18年度から実施される。環境が良いときでも、年金額が上がる可能性は小さくなった。

 また今は物価より賃金の方が大きく下がっていても、物価分だけしか支給額を下げないが、改革法では、賃金と同じ分だけ年金を下げることも決めた。21年度から実施される。

 多くの社労士らは「年金額は下がることはあっても、上がりはしないぐらいに考えておいたほうがよい」と語る。将来にわたって制度を維持するためには、年金額の抑制はある程度やむを得ない。それを前提として、年をとってもできるだけ長く働き続けるなどの生活設計が求められている。

(編集委員 山口聡)

[日本経済新聞朝刊2017年4月1日付]

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