遺産分け、公平性が重要に 預貯金の扱いカギに|マネー研究所 … – 日本経済新聞

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 家族間のもめごとや面倒な手続きがつきものの「相続」に影響を与える判例の変更や制度の創設が注目を集めている。より公平な遺産分割のあり方を示した昨年末の最高裁決定と、相続財産の名義書き換えの簡素化を目指す法務省の取り組みがそれだ。高齢化が一段と進むなかで相続の円滑化に向けて国も動き出した形だが、個人や家庭はどう受け止めて相続に対処したらいいのか。

 「遺産は公平に分けることが大事です。遺族のみなさんでよく話し合ってみてください」。遺産を巡る悩みを抱えて訪れる相談者に対して、弁護士や司法書士らが最近、こんな言葉をよくかけるようになった。

 しごくもっともな話に思えるが、わざわざ強調するのには訳がある。相続を巡って2人の遺族(相続人)の間で争われてきた裁判で昨年12月、最高裁大法廷が、公平性を重視する明確な決定を下したためだ。

 争いの元は、故人が残した約4000万円の預金だった(図A参照)。遺族2人でどう配分するかを協議する必要が生じた。bさんは預金を半額ずつ分け合うつもりだったが、これを片方のaさんは不公平だとして反発した。

■幅広い財産対象

 故人から生前、多額の贈与をbさんが受けていたためだ。生前贈与分も含めて遺族間の公平性を考えるなら、預金は全額を自分が受け取るべきだとaさん側は主張。2012年の相続開始以来争ってきた。

 その主張は一、二審で退けられたが、今回、最高裁は二審の決定を破棄した。遺産分けは遺族間の「実質的な公平を図るもの」などと指摘。aさん側の主張を認め、今後、不公平は是正される見通しだ。

 過去の最高裁判例によると、預金は法定相続割合の通り、自動的に配分するもの。取り分を遺族みなで話し合って決める「遺産分割」の対象から外して扱うとしてきた。土地などと違って評価額を巡る争いの余地がなく早期の配分に適するとの考えがあったようだ。

 aさんが二審まで敗訴した理由も過去の判例に基づいていたが、今回、最高裁は自らの判断を覆した。公平性にかんがみ遺産分割は預貯金を含め、「できるかぎり幅広い財産を対象とするのが望ましい」とした。

 国税庁によると、相続財産に占める現預金の比率は約31%(図B)。不動産に次いで高く、「相続でもめる要因となりやすい」と相続に詳しい北野俊光弁護士は話す。さらにここ十年ほど、裁判所に持ち込まれた遺産分割トラブルは件数が右肩上がり(図C)。最高裁が遺産分割のあり方を見直す必要性はもともと高かった。

 今回のケースに限らず、相続では生前贈与の有無が不公平の原因となる例が目立つ。上柳敏郎弁護士は「生前贈与分も十分考慮して、慎重に分け方を決めるべきだと最高裁も考えている」とみる。

■手続きを簡素化

 遺産の扱いが遺族にとっていかに難しいか。それを象徴するような対応見直しが政府内でも起きている。

 法務省は5月から新たに「法定相続情報証明制度」という仕組みを導入する。なにかと煩雑な相続にまつわる手続きを、少しでも簡素化するための一策だ。

 例えば故人の預金を、相続する人の名義に書き換えようとすると、銀行から様々な書類の提出を求められる。遺言書や遺産分割協議書と並んで重要なのが、故人が生まれてから死亡するまですべての戸籍謄本だ。

 銀行としてはおいそれと名義書き換えに応じ、後になり他の遺族が現れて文句を言われてはかなわない。それを避けるため、相続権を持つ法定相続人が誰と誰であるか、戸籍謄本を隅々まで見て確認するのだ。

 だが戸籍謄本を用意するのは大変な作業だ。戸籍謄本を管理するのは市町村。故人が生前本籍地を変えたことがあれば、さかのぼって各地の役所に照会する。「漏れなく謄本を集めるのに数カ月かかったという話はざらにある」と司法書士の船橋幹男氏は言う。

 名義を書き換えるのが株式であれば証券会社、不動産なら法務局に、戸籍謄本を含む各種書類を提出しなければならない。専門家の力を借りずに自力でやり遂げるのは容易でない。

 こうした手続きを簡素化しようというのが法務省の新制度。法定相続人の一覧図を作って戸籍謄本などと併せて法務局に提出し、確認してもらう。その証明書を、謄本現物の代わりに銀行などに出せばよくなる。

 国のお墨付きがあれば、銀行などは名義書き換えの求めに応じやすくなるとみられる。ただし、この仕組みが導入されても遺族が戸籍集めをする手間は残る。手続き面から見ても、遺産相続は難しい問題だ。

 万一の際に途方に暮れないための心得を表Dに示した。いくつか紹介しよう。

 相続が起きると一般に、入院費用や葬儀費用の支払いなどでお金が必要になる。預金は前述の通り簡単には名義書き換えができず、従って解約もできない。そんな場合、当座資金を確保する方法がある。

 銀行の場合、「相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を添付した合意書があれば部分的な払い出しには応じる」(三井住友銀行)という。相続人が協力して対応することが大切だ。

 残される子どもらが困らないよう親が準備すべきことも多い。代表的なのが遺言を書くこと。誰にどの財産を渡すかを明示しておけば相続のときに優先される。公平性を追求することがここでも大切になる。

(M&I編集長 後藤直久)

[日本経済新聞朝刊2017年1月25日付]

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