人気の二世帯住宅、賃貸収入・節税で誤算も – 日本経済新聞

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 子育てや介護のしやすさ、相続税の節税メリットなどで人気が高まっている二世帯住宅。もっとも、いずれ親世代は亡くなるし、それまで税制が不変である保証もない。大手住宅メーカーは将来、空いた1世帯分を賃貸に回せるプランを積極的に勧めるが、家賃収入への過剰な期待は禁物。土地相続の節税をめぐっても、税制のルール改正が思わぬ落とし穴になる可能性が指摘されている。

 自営業の男性Aさん(48)は一昨年、川崎市内に二世帯住宅を新築した。同じ建物内でAさん一家とは別の住戸に暮らす義父は現在80歳と高齢。いずれ亡くなれば、その住戸部分は空き家になりかねない。そのときに賃貸に回せるよう二世帯住宅を「簡単に改修できる設計にした」という。

 Aさんの住戸から義父の住戸へと通じるキッチン奥のドアを閉ざす工事をする。そうすれば1LDKの間取りの賃貸物件に変わり、月10万円ほどの家賃が期待できる。「住宅ローンの返済資金分くらいは賄えるのでは」とAさんはいう。

■空室率は上昇

 東京・中野で二世帯住宅に住む未婚女性Bさん(47)も、いずれ1階部分を改修して賃貸に回すつもりだ。浴室とキッチンを共用する3階建てを昨年新築して早々に父が死去。母(77)が亡くなれば、延べ床面積100平方メートルの住宅は自分ひとりには広すぎる。家賃収入を得られるようになったら「老後の生活費の足しにしたい」という。

 高齢化に伴い、二世帯住宅で親世帯の住戸が空き家になるケースが増えている。旭化成ホームズが築30年前後の物件の家族構成を調べたところ、約6割で親世代が亡くなっていた。

 そのうち、空いた住戸に、孫が結婚し、新たな世帯として代わりに入居していた例は計24%(図A)にとどまる。同社の松本吉彦・二世帯住宅研究所長は「今後結婚する孫を含めると孫世帯が入る割合は約50%に高まる」とみるが、それでも半数は1世帯分が空き家となる。

 そこで住宅メーカーが提案するのが賃貸への転用だ。旭化成ホームズは、賃貸する1世帯分の広さを簡易な工事で変更できるプランを開発した。積水ハウスは二世帯住宅に、あらかじめ賃貸用住戸を組み合わせた3階建てを勧める。こうしたプランは親が高齢になってから新築する場合は資産形成上、有力な選択肢だ。

 ただし注意点がある。ひとつは賃貸経営の先行きだ。賃貸住宅の空室率は供給増などを背景に中長期的に悪化が見込まれる。野村総合研究所によると、2033年には全国平均の空室率は40%を超える可能性すらある(図B)。専門家はどう見ているのか。

 不動産評価会社タス(東京・中央)の藤井和之氏は「東京23区でも家賃は平均で年1%ずつ下がる。立地にもよるが、空室率は長期的にみて30%程度は想定したほうがいい」とみる。

 旭化成ホームズの松本所長は「東京でいえば、改めてリフォーム投資をして賃貸するだけの家賃が入りそうなのは環状八号線の内側」という。ここ数年、一戸建ての空き家が増えている郊外では、あえて二世帯住宅の1世帯分を借りるニーズは少なそうだからだ。

 住宅メーカーが賃貸転用プランを勧めるようになったのは、2014年に相続税のルールが改正されたのも一因だ。生前「同居」していた子どもらが、亡くなった親から家を相続した場合、土地の評価額が8割も減って税額が安くなる特例(小規模宅地等の特例)をめぐる改正だ。

 二世帯住宅では、親子が別々の住戸で暮らしていても、条件を満たせば「同居」とみなされ、特例が適用される。その条件が変わった(図D)。

 13年末までは原則、「建物の内部で2世帯が互いに行き来できる」構造である必要があった。14年からはその条件はなくなり、住戸間が分離された構造でもよくなった。リフォームにあまりお金をかけずに賃貸物件として転用しやすくなったのだ。

 その一方で落とし穴になりかねないのが、新たに設けられた特例の適用条件だ。新ルールでは建物の構造ではなく不動産登記の仕方によって判断されるようになった。具体的には、親の住戸と子の住戸を一体で登記(共有など)しておく必要がある。

■特例基準が変更

 仮に別々に登記(区分所有登記)していると通常、特例は適用されない。ルール改正以前に二世帯住宅を建てた人の中にはそれに気付かないでいる人もいる。そのまま相続が発生すると、親子間では特例が適用されず、多額の相続税がかかってしまう恐れもある。

 しかも、区分所有を共有に改める手続き(合併登記)は煩雑で、個人が自力でするのは困難だ。住宅ローンの抵当権が付いていると、ローンの借り換えなどを絡めて抵当権をいったん抹消しなければならない場合もある。

 専門家に頼む必要もあり、登記にからんだ税金(登録免許税)も重い。合併登記を手がける土地家屋調査士の内田慎一郎氏によると、「税金を含めて100万円単位の費用がかかることがある」という。

 住宅メーカーなどによる周知は必ずしも十分ではない。税理士法人山田&パートナーズ(東京・千代田)の小林大輔税理士は「昨年1年間だけで区分所有を共有に変更する案件を十数件手がけた」という。合併登記をしてでも節税メリットを取るべきかどうか、早めに税理士など専門家の判断を仰ぎたい。(表悟志)

[日本経済新聞朝刊2016年11月30日付]

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